夢のマイホームは、多くの人にとって一生に一度の買い物と言ってもいいものです。そのため、設計事務所等にマイホームの設計を依頼する際には何もかもが初めての中で契約を行わないといけません。見積もりと予算計画を出してもらい、いざ設計契約となったとき、意識するべきポイントや注意点を知っておけば、スムーズかつ損なく契約を進めることができます。
今回は、注文住宅等の設計の契約を交わす際に意識するべきことや注意点を解説していきます。
ポイント①:マイホームを建てる際の契約方法は2種類ある
注文住宅の建築を依頼する際には、主に2つのステップに分かれます。
ひとつは、「設計・工事監理・建築工事すべてを同じ会社で契約する」というものです。これは大手ハウスメーカーや工務店など、自社ですべて設計から家の完成までを担当してくれる場合で、設計も監理も建築工事施工とセットで請け負ってくれる際に当てはまります。
もうひとつは、「設計・工事監理を設計事務所と契約して、実際の建築工事は施工会社と契約する」といったものです。基本的に注文住宅など一定以上の規模を持つ建築物の場合、まず設計を完了させることが第一となるので、設計ができないことには建物を建てることはできません。
そのため、まず設計事務所と設計部分の契約をして、設計を完了させます。 そして完成した設計をもとに施工会社を選定し、決定した施工会社と契約を結ぶびます。 つまり施主(建築を依頼した人、つまりお客様のこと)は、設計と建築工事のそれぞれと契約を結ぶ必要があります。 日本では、特に住宅の場合は、住宅メーカーのシェアが圧倒的に多いので「設計施工」という一貫システムでの契約がスタンダードでもありますが、本来は、設計(設計事務所)は設計どおりに工事が進んでいるか、出来ているか、という現場を確認する立場の役割があるため(設計監理業務)、施工とは切り離した立場で機能することも大切な役割になります。 そうした意味では、施主の代理人として設計どおりに現場ができているかをチェックする設計事務所の役割りを重視する設計契約と施工は工事会社と契約する工事請負契約を分けることも正しい契約の方法と言えます。
ポイント②: 設計事務所と交わす契約は「建築設計・監理業務委託契約」
設計を設計事務所に、建築工事は施工会社に契約して注文住宅を完成させる際には、まず設計事務所と契約を結び、設計図書を完成させる必要があります。そうした場合、まず設計事務所と交わす契約は「建築設計・監理業務委託契約」というものです。
建築設計・監理業務委託契約は、設計事務所などの建築士事務所が建主と交わす契約です。この契約によって発生する業務範囲は名前の通り、建築物の設計に加えて、施工会社に建築工事を依頼した際に工事が設計どおり進められているかを確認する「監理業務」も含まれます。
建築工事は設計に基づいて行われますので、設計者が責任をもって工事状況やスケジュールを確認し、施主に報告する監理業務を行います。 きちんとした建築工事が進み設計どおりの家造りが完成するまでが設計事務所の仕事になります。 こうした現場での監理業務や、建物のデザインや仕様を図面資料として作成する設計業務はもちろん、実際の建築を想定した予算計画・工事見積もり依頼等も設計事務所が担当します。
注意点①:【重要事項説明書】の内容は建築士が「契約前に説明」する必要がある
家造りはきちんとしたプロセスにそって行わないとうまくいかないものです。とくに設計と施工の会社が分かれている場合はなおさらです。そのため、一口に契約と言っても、どういった書類が用意されるのか、どういった書類を交わす必要があるのはあらかじめ知っておきましょう。
建築士法により、一定規模以上の建築物の設計や工事監理業務は、都道府県知事による登録を受けた「建築士事務所」と設計の契約を交わすことになります。2008年に建築士法が改正され、設計事務所は契約の際に、登録を受けた建築士事務所であることを「契約前に説明」することが「義務」になりました。
そのため、実際に契約書を交わす署名捺印する前に、設計事務所側からは、これらの事項の説明があります。 その際に発行される書類が「重要事項説明書」というものです。正式なものでは「日本建築士会連合会」を含む4協会が監修した公的な書類があらかじめ用意されていますが、設計事務所独自の書式を採用することもあります。
この書類で確認される「重要事項」には、「設計事務所及び設計担当者の資格情報」や「建築物の概要」、「報酬額や報酬支払の時期」、「契約解除に関する取り決め」などがあります。また「設計または工事監理の一部業務を他社に委託する場合の計画の明示」といった付随的な情報も明記されています。
注意点②:その他必要書類も含めて計3種類の書類をしっかり交わそう
「重要事項説明書」以外に必要な書類としては、「設計監理業務委託契約 約款」と「設計監理業務委託契約書」があります。 約款とは、契約を交わすうえでの細かい取り決め条項をまとめたものです。
設計や工事監理業務の進め方、著作権の帰属、報酬支払に関する取り決め、秘密保持事項といった一般的な決まり事から、解除権行使の取り決めや紛争解決方法などの中途段階での解約に関する指針までさまざまな事柄が記されています。
設計契約の場合は建築工事とは異なり、設計の追加変更や修正も対応できるように制度設計されています。また設計契約独自の内容として、依頼主も一緒にどんな建物を建てたいかを考えていく努力義務も明記されています。 設計が円滑に完了するためには、実際に住まうお客様のご要望の明確化や協力がなければ成り立たないからです。
契約書への書面捺印はそうしたことへの同意の意味も込められていますから、契約書の内容をあらかじめ知っておき、そして契約前から意識しておくようにしましょう。それが後々のトラブルを防ぐことにもつながります。
まとめ
以上、設計事務所との設計契約書を交わすうえでの意識するべきポイントや注意点について一通り解説しました。 まずは契約の大まかな流れを知り、契約する設計事務所がどこまでの業務範囲を担当するのかを知っておくことが大切になります。そして契約事項をあらかじめ意識しておき、設計段階で潰せる問題点はできる限り全て潰せるよう依頼側からも積極的に意見を出すようにしましょう。
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